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在宅医療の現場で(N.Kさん)

N・K さんは、在宅医療の現場で働く看護師さんです。 
医師と患者様のやり取りから具体的な症例とともに、看護師としてご自身の感じたことを綴ってくださいました。

 

【症例1】60 代女性 乳がん末期、余命月単位。
 
著しい貧血を伴い、トイレへの移動時息切れ著明。夫は数年前に急死し、息子夫婦と孫と 4 人暮らし。
手術や高額な代替医療など様々な治療に挑戦してきた。 
 
全身倦怠感が強く、終日ベッド上で過ごしている。
夜間不眠。色々考えてしまい、「早く死にたい」と訴え、医師訪問のたびにいつ死ねるのか、まだそんなにあるのかと涙される。トイレなど労作時に息切れし、時に呼吸困難を伴い、パニックに陥ってしまう。 

 

前医からは「(代替療法?)変な治療もしたりして、変わった人、関わるのは難しい」との申し送りがある。(西洋医学ではない治療をおこなっていると、あーあっち系の人などと云われることが多い、暗黙の了解のようになっているようにも感じる) 
 
日中は嫁と 1 歳の孫がいる。しかし家は広く、嫁は子育て中であり、殆ど患者1人で過ごして いる。(嫁・姑の関係も色々あるだろうか?とにかく、別のお宅?と思うほど家が広い) 
 
訴え・1(関わってまもなく)
「まだ死ねないのか?」、「ヘルパーさんを変更してもらったから少しは気分が楽になった。 彼女は『2時 20 分になったから帰りますね。』なんて言って、やって欲しいことはまだあったのにさっさと帰ってしまう。
ただトイレットペーパーを変えてもらいたかっただけなのに。あんな風に時間にしばられるような人生は私にはなかったから合わないのよ。」、「死にたいと思っているのに、食欲がまだあるの。それが少しでもなくなれば死ねるのに。」(倦怠感を緩和する為にステロイド剤を内服してもらっている。ステロイド剤は不眠や食欲亢進などの副作用がある) 
「どうしたらいいのか分からない。みなさんはどうなんですか?これはじっと耐えるしかないんですか?ねえ先生どうすればいいんですか?」 
 
今まで出来ていた生活動作ができず、人に委ねなければならない状況の中で、ゆっくりと寄り添って話しを聞いてもらえる相手がいないという現状がある。
死に対する恐怖が強く、また耐え難い症状が出てくるのではないかという不安も抱えている。 
 
訴え・2(往診の医師に週 2 日来て欲しいと依頼があってから) 
「先生、私、死ぬのが怖いのかしら。早く死にたいんだけど、だからと言って自分で死ぬことは出来ない。 」、「私何が怖いのかしら?」 、「先生は死についてどう考えているの?」、 「分かったわ。この状況が怖いのね。私混沌としてました。この状況が嫌なのよ。少し動くと苦しくてパニックになって。ずっと起きているような、寝ているような状態で(浅眠)。分かったわ私この状況が耐えられないんだわ。これからもっと苦しくなるかもしれないし、それが怖いんだわ。 」、 「先生と話していたら整理が出来ました。先生は私のことをわかってくれる。ありがとう先生。 」と涙をながしながらもすっきりした表情を見せる。 

このとき医師は椅子に腰をかけ、私はいつ死ぬのかなどの質問にゆっくり答えあとは頷きながら積極的に傾聴していた。 
 
医師の穏やかに寄り添う態度が、往診回数を増やして欲しいとの申し出につながり信頼関係が構築されていく過程にあると考える。 
このやり取りから往診という限られた時間の中でも患者との信頼関係は築いていかれるのだと思っている。
患者の質問に答えられず、患者が求めている答えを出せなかったとしても、寄り添うことが求められているなと感じる症例です。  

 


【症例2】60 代女性 卵巣がん末期、余命週単位。 
 
腹膜移転により、腹部筋満。腹水穿刺を行っても、腹水貯留のスピードは速く、 2 日に 1 回 1000ml ほどの腹水穿刺を実施していた。 
疼通の訴えはなく、ただお腹が苦しくて水を抜いて欲しいとの訴えがあった。
傾眠傾向にあり、「すーっと眠れるのが気持ちいいです」と話し、話し終えるとすーっと寝てしまう状況が続いた。
「とても穏やかです。本当に幸せでした。痛いところはありません」と笑顔で、穏やかに話される。 
 
在宅看取りを決心されたご主人の心中は穏やかでなく、何かイベントが起こる毎に診療所への連絡があった。
(毎日) 子どもはおらず、ご主人お一人で昼夜問わず、ずっとそばに寄り添っていた。 
 
病院を退院され往診を開始してから 2 週間、往診同行の際、夫のやつれた感じにそうだよねと思いつつも驚いた。
「夜は早く寝て 7 時頃起床しぐっすり眠れている。昨日友人が来て栄養をつけなくちゃダメだよとおいしいものをたくさん持ってきてくれました。 」とのことであった。

ご主人は気丈に振る舞われ「私は大丈夫です。」と笑顔を見せる。 
 
この会話ややせている様子から考えると食事が喉を通らないんだなと推測できる。

熟睡できて いるのかは言葉通り受け取って良いのかな?と疑問が生じた。
ご本人はとても穏やかではあるが、病状の悪化と共に外見も変化し、死が近づいているのを認めざるを得ない状況の中、夫の受け入れられない気持ちがうかがえる。

 

往診開始後、3 週目に永眠される。    
その後のご主人のケアは必要だと感じている。と共にご主人が医療者に求めていたのは何だろう。あんなにやつれてしまう前にどう声かけしたら良かったのだろうと考えている。 

在宅医療現場で働くNさんからお話を伺いました
死生観 在宅医療