シリーズでお届けしている死生観について-
今回は埋葬の時に伝わる風習について各出身地の方に伺ったお話をご紹介していきます。
◆福島県出身の方のお話
埋葬の際、現金(本物)を三途の川の船賃として棺桶の中に入れていた。
棺を運ぶ際は白装束に身を包み、運んだ。
昔、土葬だったときは、埋葬してからしばらくの間は毎日通って盛り土をした際に立てておいた細い竹で棺をトントントンと叩いて、きたことを告げていた。だいたい 10 日ぐらい経つと棺が腐り始め、トントントンと叩けなくなったら毎日通わなくてよくなる。
また、お墓参りの際、こけると 3 年(嫁に)いけないと言われていたのでとても慎重になって歩いていた。
◆静岡県在住の方のお話
寄合、班などで近所の方が亡くなった時は家で通夜葬式を行うときには炊き出しをしたり、全て手伝っていました。
手伝った方にそのおかずをお渡ししていたと思います。いまは殆どが会館でやっています。
昔は家をたてるときに葬式ができるような作りにしたりしていましたが、それも 30 年前がぎりぎり。
自宅葬をしていた際は、記帳はしていなかったけど、今の会館で行う際は必ず行うようになっています。
今も通夜のときに、来ていただいた方に振る舞ったジュースやお菓子などを気持ちばかり持って帰って貰っていました。
基本的に葬式して火葬、時間がない場合は初七日までやっていました。 精進おとしのあとに親族で供え物は分けて終える感じです。
◆石川県在住の方のお話
石川県は浄土真宗が多いみたいで加賀地方出身の私の母の周辺もそうだし、能登地方の父の周辺もそうでした。
葬儀の後、火葬をします。 火葬が終わるまでの待っている時間に皆が集まってお寿司などが振舞われます。
火葬が終わったら、焼けた後に残った骨を皆が順番に箸で骨壷(というか箱)に入れていくの。
◆千葉県在住の方のお話
父の実家が市川ですが、身内、知人の葬儀のときに日の高いうちにお寺へ参ったことはありません。
また、母によると姉が佐倉市に嫁いだ友達から香典返しを 1000 円もらったことがあったそうです。
お通夜は 2~3 時間でお客様が帰られますが、お客様が帰った後も、身内の人が一晩中起きてロウソクの火を絶やさないように灯すということを母に聞いたことがあります。 実際にそれをしていたようにも記憶していますが、千葉だったか、母方の宮城だったかはっきりは覚えていません。
◆名古屋在住の方のお話
自宅から出棺の際、「もう帰ってはこない」という意味を込めて茶碗を割る。
また、通夜、葬儀とも焼香時に焼香鉢近くにお金(いくらでも良い)をお供えします。三途の川を渡るにもお金がかかるだろうと言う意味があるそうです。
お淋し見舞い(故人や遺族が淋しくならないように元気づける会)がお通夜の 時のみ行われ、お菓子や、お茶などが振舞われます。
◆京都在住の方のお話
故人に供える「供花」に菊などではなく、香りの高い「樒(しきみ)」を使う。外に飾る。玄関(入口)の一対は親族。
枕花は生花も使う。また、昔は胸元に刀(の代わりに包丁など)を置いていました。 (葬儀屋さん主体のご葬儀では不明です。 )
ここは帰ってくるところではないですよ、西方浄土へ旅立ってくださいの意で出棺の際、茶碗を割る。
京都市周辺では、出棺の際に和紙やわらを燃やす風習がありました。
また、霊柩車の進行方向を可能な限り、南、西というより、北方面に向かわないように進みます。鳥居は 1 年間くぐらない。香典袋の水引はご葬儀当日は黒白。以降は黄白を使用する。
◆鳥取県中部地方の話(F さん)
その小さな村では、昭和 30 年代までは、葬儀が終わると町内の神社に遺体を運んで、専用の釜に納めたあと、夜通し町内の男衆が骨になるまで焼いたそうです。女性や子供は近づくことを禁止されていたそうです。
◆中国・福建省出身の方のお話
紙のお金(偽物)を棺に入れる。ほかにも人型や、家なども紙で作って一緒に入れる。
お別れの儀式は 3~10 日かけて行われ、各地から親戚などが戻ってくるのを待つ。
全員挨拶が終わったら火葬場へ行き、その日のうちに火葬して骨を引き渡される(骨拾いも家族が行う)。
20 年前までは土葬していた。
◆中国・広東省出身の方のお話
お別れ会は葬儀場で 2 時間行う。移動してご飯を食べる。
火葬場で棺を渡したら、3 日後に骨を取りに行く(骨は業者の人が拾ってまとめてくれる)。
昔は土葬していたけど、衛生的な観点から法律で禁止されて今現在は火葬のみ許されている。
現代では効率的で簡易化された葬儀が増え、昔ながらの習わしが消えてしまっているところもあると聞きます。
上記のようなお話もご高齢の家族と共に過ごしている方々には当たり前の話ではあるようですが、核家族化している昨今、こういった話をご家庭で聞く機会は減ってしまっているように感じます。
伝統を受け継ぐことで次への命を受け継ぐ。
お盆や、暮れにふるさとへ帰省した際に土地の風習などを聞いてみてはいかがでしょうか。