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チベットの死生観

テレビでチベットの人たちに、死をどう思うかというインタビューをしているのを見た時に、子ども達も含め多くの人が、死を当然のこととして受け止めている様子が印象に残っています。
チベットの人々の死生観について調べてみたその一部分をご紹介します。

“チベットは長い間水の中にあった。それから徐々に水が涸れたか浸透したか定かではないが、 高山に囲まれた新しい高原が誕生した。

雪の国」と呼ばれたその新しい土地に野蛮な聖霊や動物といった全てのものが住み始めた。

観音菩薩(アバロケテシヴァーラー)は人類という特別な種類として現れたので、その土地の 君主になるよう運命付けられていた。

そのため、彼は 1 匹の雄猿に姿を変えた。 その後「ヤルン」と呼ばれる谷を見下ろす岩山ではタラ菩薩(アリャターラー)が鬼女に姿を 変えた。猿と鬼女が 1 つになり、6 人の子供が生まれ、その子供たちがやがてチベット民族とな っていったのである。

最初に出来た村の 1 つは今でも遊び場という意味の「ツェタン」として知られ、6 人の子供たち の直系としてチベット民族の 6 つの氏族が誕生したと信じられている。”などがあります。

参照元:チベットハウス・ジャパン HP チベット文明誕生より

宗教は主にチベット仏教(さまざまな宗派がある)やボン教などがありますが、 仏教のとらえかたでは、 「生と死はひとつで全体なるものとされます。

そこでは死は生の新たな る章の始まりにすぎず、死は生の意味の全貌を映し出す鏡なのだ。」とされます。
 
チベットの人々は輪廻転生を信じていて、今生に人として生まれたことは限りない幸せなことで、人として生まれたから、仏法を学ぶ機会を得たのだと考えます。

死によって消滅するのは肉体だけで、魂は次の生へと転生していきます。

 

今のこの人生は、魂の辿る長い旅路のひとコマに過ぎません。生があり死を迎え、また生を受 けて再び死に至る。

この輪廻から解脱した時に、真の極楽浄土に到達できます。

解脱への道は遠く、その道程はカルマ(業)により左右されます。

現世に起こることは前世に因があり、この因果応報は、自分自身の前世によるとされます。

前世のせいで起きた今生の不幸は、嘆いても、恨んでも、詮無いことで、それよりも、この不幸がもうこれきりで終わりになるように、こうした不幸が、今生も来世も誰の身にも起きないようにと、ひたすら祈ります。

また、輪廻から離脱し、悟りに達するための道筋は、僧院に入る、巡礼に出る、瞑想をするな どさまざまあり、その中でも最も容易な方法は、経文が沢山刻まれたマニ車を回すことです。

 

宗教的な行為の中でも、各種の儀礼はとても重要なもので、チベット人は儀式を4つの種類に分類しています。

何かを鎮めるための儀式、発展させるための儀式、屈服させるための儀式、消滅させるための儀式です。

儀式の目的はさまざまで、怒り狂った心を鎮める儀式やおはらいの儀式から、葬儀や宗教的な 出来事を記念する儀式、長寿や安全な旅を祈る儀式、豊作や国の平和を祈願する儀式まであります。

儀式はその種類、目的、宗派、どのような神に捧げられるかによって、形態が変わります。

こうした儀式は複雑で、入念な準備が必要となる場合が多く、たとえば、儀式の種類に応じて異なる奉納品や供物の菓子(トルマ)を用意しなければならなりません。

また、経文を歌い暗唱する祭儀の中でも、進行に応じてさまざまな楽器や旋律が用いられます。

儀式が捧げられる対象も、仏陀、パドマサンバヴァ、パンテオン(万神殿)の神々、土地神などさまざまです。

 

祭儀は修行者によって執り行われ、その修行者は僧である場合と僧でない場合があります。日常的な礼拝などは家の主が行います。

儀式が行われる場所も、寺院、家の祭室などさまざまで、非仏教的な神に捧げられる場合には、 屋外の聖なる場所で行われます。

チベット人はきわめて熱心に宗教的な行為を実践しています。そのことは、彼らの日常的な行為に表れています。

燻蒸、バターランプ、水を満たした椀などを神に捧げる行為は、祈りや巡礼の代替行為なのです。

チベット人の信仰の熱意は、日常的な行為以外でも明らかです。

たとえば、タルチョ(五色の 祈祷旗)を掲げ、巡礼へ出かけ、舎利を崇拝し、寺院への寄進を行い、説法に参加し、チョル テン(仏塔)を作る。

このように一般信徒は、悟りを得る為というよりも、来世でより良い存 在に生まれ変わるために功徳を積んでいます。
 
葬儀は鳥葬、水葬、土葬、火葬、塔葬があるが、一般の人や経済的に恵まれない人や天然痘などでの病死や殺人などの罪を犯した人、活仏や貴人、声望のある活仏などでは葬送の仕方が異 なります。
参考図書:渡辺一枝著「わたしのチベット紀行」、フランソワーズ・ポマレ著「チベット」 (順不同) 

チベットの死生観について調べました
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